「蓬莱花」Peng Lai Hua(ホウライカHOU LAI KA)
■1番
此の指が憶えてる
君の顎の容
此の喉が憶えてる
君の名の響
「観える?雪」と君が
悪戯に微笑む
夜明けに身を起こす
閉じてた窓
小楼(しょうろう)の古帳(とばり)は
微かに風に揺れ
ここに、君はいない
君へ描く
雪を磨(す)って
硯(すずり)の墨(すみ) 筆染め
閉じた瞼記憶なぞれ
君に描く
雪に埋み
眠る庭にふくらむ
蕾
そう蓬莱花
■2番
此の腕が憶えてる
君の背なの丸み
此の耳が憶えてる
君返す応(いら)え
寝台の花燭(かしょく)は
横顔にきらめく
「綺麗に描(か)いてね」と
微笑(わら)った君
真夜中の化粧(けわい)は
ゆるやかにしずかに
白く君よそおう
君と描く
言葉交わす
「もうじきね、」とささやき
君は瞳閉じて眠る
続きを待つ
今も待つよ
春を待っていた君
絵には
花を散らそう
君を抱いた
僕に遠い
右の頬が濡れてた
涙
最後まで隠して
君を描く
雪に埋み
眠る岡に零るる
香り
そう蓬莱花