風が変わったのは そのあとでした。夏の間 笑いながらいっしょに踊ってくれた風が 別人のように顔をこわばらせて 葉っぱたちにおそいかかってきたのです。葉っぱたちはこらえきれずに吹きとばされ まき上げられ つぎつぎと落ちていきました。
「さむいよう」「こわいよう」(风声,回声)葉っぱたちはおびえました。そこへ 風のうなり声の中からダニエルの声が とぎれとぎれに 聞こえてきました。
「みんな 引っこしをする時がきたんだよ。とうとう冬が来たんだ。ぼくたちは ひとり残らず ここからいなくなるんだ。」
フレディは悲しくなりました。ここはフレディにとって 居心地のよい夢のような場所だったからです。
「ぼくもここからいなくなるの?」
「そうだよ。ぼくたちは葉っぱに生まれて 葉っぱの仕事をぜんぶやった。太陽や月から光をもらい 雨や風に はげまされて 木のためにも人のためにも りっぱに役割を果たしたのさ。だから 引っこすのだよ。」
「ダニエル きみも引っこすの?」
「ぼくも引っこすよ。」
「それはいつ?」
「ぼくのばんが来たらね。」
「ぼくはいやだ! ぼくはここにいるよ!」
……
「だって 引っこしをするとか ここからいなくなるとか きみは言ってたけれどそれは——」
「死ぬ とういうことでしょ?」
「ぼく 死ぬのがこわいよ。」
「そのとおりだね。」
「まだ経験したことがないことは こわいと思うものだ。でも考えてごらん。世界は変化しつづけているんだ。変化しないものは ひとつもないんだよ。春が来て夏になり秋になる。葉っぱは緑から紅葉して散る。死ぬというのも 変わることの一つなのだよ。」
変化するって自然なことだと聞いて フレディはすこし安心しました。枝にはもう ダニエルしか残っていません。
「この木も死ぬの?」
「いつかは死ぬさ。でも『いのち』は永遠に生き ているのだよ。」