恋忘れ草
作詞:マチゲリータ 作曲:マチゲリータ
睦月始(荷笙)&弥生春(里芋)
『――一方の心中は。』
荷笙:
振(ふ)り放(さ)け見(み)ては、嫋(たを)やぐ背中(せな)に杜鵑花(とけんか)散(ち)る。
心(こころ)を挵(せせ)る様(よう)な黙(しじま)に泣(な)き沈(しず)んでいる。
背(そむ)き果(は)つ際(ぎわ)の儚(はかな)さは、
避(さ)らぬ別(わか)れに似(に)た悲(かな)しび。
往昔(おうじゃく)に視(み)た様(よう)な恐(おそ)れを
思(おも)い出(だ)さない様(よう)にしていた筈(はず)なのに。
打(う)ち明(あ)けた心(こころ)の中(なか)に潜(ひそ)んだ宿命(さだめ)に、
倖(しあわ)せを浮(う)かべては恋路(こひぢ)に降(ふ)り積(つ)もる。
胸(むね)痛(いた)し言葉(ことば)。
『――一方の心中は。』
荷笙:
寂寞(じゃくまく)としたこの夜(よる)深(ふか)し、
覚(おぼ)え浮(う)かぶ。
里芋:
短(みじか)し髪(かみ)に仄(ほの)紅(あか)い頬(ほほ)、か細(ほそ)き声(こえ)。
仇(あだ)を心(こころ)に抱(かか)え生(い)きるあなたを、
傷(きず)つけることしか出来(でき)なかった。
零(こぼ)るる愛(あい)を刃(やいば)に変(か)えてしまう、
この手(て)をいっそ切(き)り落(お)としてしまいたい。
愛(あい)忘(わす)れ、恋(こい)だけ。
我(われ)か人(ひと)かと身(み)辿(たど)る。
囁(つつ)やく慈悲心鳥(じひしんちょう)は、
素(そ)知(し)らぬ顔(かお)をして
雲海(うんかい)へと飛(と)ぶ。
『――二人は。』
荷笙:
孰(いず)れこうなると、
里芋:
どこかでは分(わ)かっていた。
二人:
せめてもの愛情(あいじょう)を遺(のこ)して、
別(わか)れ道(みち)へと歩(ある)き始(はじ)める。
『――別れ際に一方が。』
里芋:
このまま生(い)きたとしても、
倖(しあわ)せになれないだなんて言(い)わないで。大丈夫(だいじょうぶ)だから。
『――餞として。』
荷笙:
一(ひと)つの人生(じんせい)ともう一(ひと)つの人生(じんせい)が重(かさ)なったこの季節(きせつ)に
二人:
恋(こい)忘(わす)れ草(ぐさ)を。