雨が降りしきり中
狐は、男を待っていた
とある夏の夜の夢に 酷く胸を灼かれては
心掻き乱されるパラノヰア
獣故の性分か 甘い蜜に従順な
この身焦がし今宵も 下弦の月を睨む
二つの世を分け隔つ物
この手で切り刻む為に
水鏡に写る姿さえも変えて見せよう
通り雨で終わるなら
泣いて泣いてそれでも泣いて
大きな湖(うみ)になったなら
貴方は溺れてくれますか
侘びしき秋の夕暮れも 舞い散る雪へと移ろう
馳せる想いの丈も降り積もる
一目いま一目よ と急く心を宥めては
玉響の逢瀬へと足早に闇を駆ける
梅の華 簪(かんざし)にして
打った芝居の数よりも
暇乞いの侘びしさに幾度も枕濡らす
通り雨で終わるとも
愛し愛しそれでも愛し
千里の山も越えたなら
私を愛してくれますか
この男は、どうして私の物ではないのか
この笑顔は、どうして私だけに向かないのか
この愛は、どうして届けないのか
この世で結ばれないのなら、地獄で結ばれましょう
宿命に抗いながら
恋唄紡ぐ春の夜に
愛しき人
微笑むその先に女の影
通り雨に過ぎずとも
愛し愛し愛し疲れて
化かし合いに勝てぬなら
いっそ二人で
三途の舟場を越えて
共に餓鬼の籍に入ろうか
髑髏(されこうべ)さえも愛しい
此が私の嫁入り
血潮の湯浴み済んだら
程なく参ります